スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

トリノ王立歌劇場 2010日本公演 「椿姫」 「ラ・ボエーム」

ヴィオレッタ、ミミ、7月終わりに上野で出会った女性たち。
虚構世界の住人たちが 肌理の細かい上質な音楽とともに目の前を駆け抜けて行きました。


7月23日 椿姫

誰かを愛する事が、別の誰かを傷つける。
みんながハッピーになるには誰かが、愛の形を変えなくちゃいけない。
じゃあ、誰が?
でも、どうして?
そんな問いかけがヴェルディの音楽から聴こえて来ました。

「あなたの子供さんから、身を引く私を、あなたの娘だと思って抱きしめてください」間もなく訪れる自分の人生の末路、それはおそろしく孤独でみじめなものだろうと頭では理解しながら、必死に人の優しさやぬくもりを求めて 別れ話をもちかけにきたアルフレードのお父さんにすがりつく。
ヴィオレッタの底なしの孤独にゾッとしました。心情的には彼女に同情しながらも、世間体や体面を重んじるが故に、彼女を抱きとめてあげることができない。

愛って難しい。
ナウリさん、迫力ありましたよ。

デセイさんの声は高音から低音域まで、その輝きはダイアモンドのよう。その比類なき美しいソプラノで紡ぎだされるヴィオレッタの心の揺れ。感情の襞。そこには血の通ったひとりの女性が浮かびあがってきましたよ。

終幕は衝撃。
何もかも喪い、何もかも諦め、一人ぼっちになった彼女がつかぬ間の夢の中で絶命するラストは凄絶でした。
自分を傷つけたことが許すことのできないお坊ちゃま、子供の将来のため、これで良かったんだと考える世故にたけた田舎の老紳士が、ヴィオレッタのような境遇の女性の病床に現れるはずがない、それが現実っていうものなのだよ・・・あああ、イタリアだわっつこの演出。

現実と夢の区別のつかない死期の差し迫った状態と考えれば、現実はどうであれ、自ら描き出した愛の中で希望にみちながら死んでゆくヴィオレッタは幸せなのかも。

7月30日 ラ・ボエーム

あっけらかんと、オンリーワンを夢見る青年たちの屈託のない毎日。
彼らの歌と音楽はふわふわとして明るい。
クリスマスイブの夜、彼らの暮らす屋根裏部屋に、突如現れたお針子のミミ。
そして、恋に落ちるロドルフォとミミ。
心理的、そして身体的にぐんぐん距離が近づいていく2人のデュエットは、熱に浮かされた当人同士の深層心理の描写が巧みに表現されていました。
心模様だけでなく、歌だけでそれぞれのおかれている立場や境遇もしっかりと、伝わってくる。
その細やかな音楽に、うわあ~すごおおおい・・うっとり。

第2幕闊達な街中の風景と、幾重にも張り巡らされた歌と、パフォーマンスにのけぞりました。
舞台いっぱいの人々の織り成す、プッチーニの豊かな音楽がホール隅々にまでひろがっていきましたよ。
気づくと2幕が終わり、ワタシ感動のあまり泣いておりましたよ。
泣く場所じゃない・・ですね。

雪の降る早朝のシーン、ムゼッタとマルチェッロの痴話げんかとミミとロドルフォの切ないアリアが同時進行。今は寒い冬だから、春になったら別れましょう・・・なんで?

春になる前に別れ、貴族に囲われたミミは這いずるようにして、永遠のモラトリアム世界である屋根裏部屋に戻って来ます。人生の最期の時間を過すために。
そしてかつての恋人の傍らで、心を満たして死んでゆきます。
欲しいものをすべて手に入れて。
ミミの心拍数がゆっくり落ちてゆく音楽と同時に舞台の色彩が徐々に失われ、モノトーンの世界へと切り替わっていく様には、ミミの死により、彼らの浮かれた日々がゆっくりと喪われていく象徴のようにも思えました。

永遠に喪われた、無邪気な日々に感じるノスタルジー。
彼らはどこへと消えていくのでしょう。

フリットリさんのミミは、過酷な運命、病と貧しさのなかで死んでゆくかわいそうな女性像ではなく、非常に前向きで力強い生命力にみちた女性でした。
なんていうのかな、力ずくで欲しいものを手に入れていく貪欲さや激しさがあるのに、表にはそれをださない、むしろ儚げで可憐に見える女性。秘めた内面をにじませたフリットリさんのミミもまた、血の通った女性でしたよ。歌も素晴らしかったです。
男性陣では哲学者ココッリーネ役の方のソロが印象的でした。

ラ・ボエームは最終日とあって、カーテンコールが華やかでした。
客席は熱に浮かされたように喝采を送りつづけ、オケピットからも奏者さんたちが足で舞台の床を踏み鳴らす音がホールに響き渡り、客席も舞台の上の皆さんも非常に満足した模様でした。
この日の席は偶然、歌劇場の総裁さんの近くでして、演奏中には自ら率先して(?)ブラボーを連発、カーテンコールではiphoneのストップウォッチを使いカーテンコールの時間を計り、大満足というお顔をしておられました。
チャーミングな方なんですね。
チャーミングといえば、会場にはデセイさんがいらしていて、リアルデセイさんを見かけてしまいました。
とても知的な雰囲気でしたが、予想以上に小柄で華奢な感じで驚いたです。

椿姫もラ・ボエームも人生初体験。
虚構の世界からなかなか抜け出せない1週間になってしまいました。




コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

hiromian

Author:hiromian

日々のこと、少年合唱のこと、少しずつアップしてまいります

calendar
<09 | 2017/10 | 11>
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
最新コメント
リンク
このブログをリンクに追加する
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。